作業環境
- 型番:AT-x510-28GTX
- ファームウェアバージョン:5.5.0-1.3
OSPF 使用についての注意点
- x510 シリーズで OSPF を使用するにはプレミアムライセンスが必要です
- x530 シリーズでは標準で OSPF が使用できるようです
OSPF についての基礎知識
- エリア 0 は「バックボーンエリア」と呼ばれる
- すべてのエリアは何らかの形でバックボーンエリアと接続されている必要がある
network
設定で OSPF を有効化するインターフェースとエリアを指定するDR/BDR
の選出方法:- プライオリティ値が大きい順に DR/BDR を選出
- プライオリティ値が同じ場合、ルータ ID の大きい順に DR/BDR を選出
- DR/BDR 以外のルータは DROTHER と呼ばれる
- アジャセンシーとネイバー
- DR/BDR 間とはアジャセンシーを確立
- DROTHER 間ではネイバーを確立
- OSPF のコスト値はデフォルトでリンク(インターフェース)の帯域幅に基づいて決まる
OSPF 基本設定
OSPF プロセスの起動
OSPF プロセスの起動はグローバルコンフィグモードにて以下コマンドで行います。
router ospf [<1-65535>]
[<1-65535>]
:プロセス ID を指定- デフォルト:0(手動で 0 を指定することはできない)
- OSPF プロセスがただ一つの場合のみプロセス ID の指定を省略可能
上のコマンドを実行すると OSPF モードに移行します。
OSPF を有効化するインターフェースとエリアの設定
network NETWORK area AREAID
NETWORK
:ネットワーク範囲を指定- 指定した範囲内の IP アドレスを持つインターフェースで OSPF が有効になる
- 指定形式は、マスク長形式またはワイルドカードマスク形式
AREAID
:OSPF エリア ID を指定。形式は次のいずれか<0-4294967295>
:10 進数形式(例:1)A.B.C.D
:IP アドレス形式(例:0.0.0.1)
ルータ ID の設定
OSPF プロセスが使用するルーター ID の設定は以下の 2 通りの方法で行うことができます。
- 対象のプロセスの OSPF モードにて以下コマンドで設定
ospf router-id A.B.C.D
A.B.C.D
:ルーターID。IPアドレス形式で指定
- グローバルコンフィグモードにて以下コマンドで設定
router-id A.B.C.D
A.B.C.D
:ルーターID。IPアドレス形式で指定
ルータ ID の決定プロセス
ルータ ID は以下のプロセスで決定されます。
- OSPF モードの
ospf router-id
コマンドが設定されている場合は、その設定値が ルータ ID となる。そうでない場合は次のプロセスに進む - グローバルコンフィグモードの
router-id
コマンドで設定されている場合は、その設定値が ルータ ID となる。そうでない場合は次のプロセスに進む - ループバックインターフェース(lo)に IP アドレスが設定されている場合は、その中でもっとも大きなものがルータ ID となる。そうでない場合は次のプロセスに進む
- ループバック(lo)以外のインターフェースに設定された IP アドレスの中でもっとも大きなものがルータ ID となる
ルータ ID 設定変更の反映
ルータ ID の設定を変更した後、その変更が反映されるのはシステムまたは OSPF プロセスの再起動後です。OSPF プロセスの再起動方法はこちら参照。
設定例
- ルータ ID:10.200.30.1
- network:10.10.2.1/24
- エリア ID:1
router ospf 1
network 10.10.2.1/24 area 1
ospf router-id 10.200.30.1
オプション設定
経路再配送の設定
非 OSPF 経路を OSFP で通知するための設定です。OSPF モードにて以下コマンドで行います。
redistribute {connected|static|rip} [各オプション]
{connected|static|rip}
:再配送対象の経路を指定connected
:非 OSPF インターフェースの直結経路static
:スタティック経路(ip route
コマンドで登録した経路)rip
:RIP 経路。RIP インターフェースの直結経路は含まれない
[各オプション]
:[metric <0-16777214>]
:再配送経路のコスト(メトリック)値。デフォルトではdefault-metric
コマンドで設定した値になる[metric-type <1-2>]
:再配送経路のメトリックタイプを 1 または 2 から指定。タイプ 1 では再通知時のメトリックに AS 内の通過コストを加算した上で評価する、タイプ 2 では再通知時のメトリックを AS 全体で使う。デフォルトはタイプ 2[route-map NAME]
:ルートマップ名を指定。特定の非 OSPF 経路だけを再通知したい、あるいは再通知したくない場合や、再通知する経路の属性を任意に設定したい場合などに指定[tag <0-4294967295>]
:再配送経路のタグ。デフォルトは 0
設定例:非 OSPF インターフェースの直結経路を再配送する場合
redistribute connected
default-metric コマンドについて
このコマンドで再配送時のデフォルトコスト(メトリック)値を設定できます。OSPF モードにて設定します。
default-metric <1-16777214>
<1-16777214>
:デフォルトコスト(メトリック)を指定- デフォルトではシステムが経路種別ごとに適切な値を選択する
デフォルトルート配布の設定
デフォルトルート(0.0.0.0/0)の AS 外部 LSA を生成し、AS 内に通知させたい場合に設定します。
OSPF モードにて以下コマンドで設定します。
default-information originate [always] [その他オプション]
[always]
:デフォルトルートの情報を持っていなくても 0.0.0.0/0 の AS 外部 LSA を生成させたい場合に指定- 省略時は OSPF 以外でデフォルト経路を学習したときだけ 0.0.0.0/0 の AS 外部 LSA を生成
[その他オプション]
[metric <0-16777214>]
:デフォルトルートを AS 外部経路として OSPF ネットワーク内に再通知するときのメトリック。デフォルトは 10[metric-type <1-2>]
:再通知するデフォルトルートのメトリックタイプを 1 または 2 から指定。タイプ 1 では再通知時のメトリックに AS 内の通過コストを加算した上で評価する、タイプ 2 では再通知時のメトリックを AS 全体で使う。デフォルトはタイプ 2[route-map NAME]
:ルートマップ名を指定。再通知するデフォルトルートの属性を任意に設定したい場合に指定
Hello/Dead インターバルの設定
Hello/Dead インターバルの設定は、対象の OSFP インターフェースのインターフェースモードにて以下コマンドで行います。
ip ospf hello-interval <1-65535>
<1-65535>
:Hello パケットの送信間隔(秒)- 同一ネットワーク上のすべてのルータに同じ値を設定する必要がある
- デフォルト:10 秒
ip ospf dead-interval <1-65535>
<1-65535>
:Hello パケットの Router Dead Interval タイマ(秒)- 隣接ルータから Hello パケットを受信できなくなったときに、隣接ルーターがダウンしたと判断するまでの時間を示す
- 同一ネットワーク上のすべてのルータに同じ値を設定する必要がある
- 最小値:Hello インターバルの 2 倍
- 推奨値:Hello インターバルの 4 倍
- デフォルト:40 秒
認証の設定
エリア単位での認証の有効化
エリア単位での認証の有効化は OSPF モードにて以下コマンドで行います。
area AREAID authentication [message-digest]
AREAID
:対象エリア ID。次のいずれかの形式で指定<0-4294967295>
:10 進数形式(例:1)A.B.C.D
:IP アドレス形式(例:0.0.0.1)
[message-digest]
:対象エリアの認証方式として MD5 ダイジェスト認証を使う場合に指定。デフォルトは簡易パスワード認証
認証用の鍵はインターフェースごとに以下のコマンドで行います。
- 簡易パスワード認証時:
ip ospf authentication-key
コマンド - MD5 ダイジェスト認証時:
ip ospf message-digest-key
コマンド
インターフェース単位での認証の有効化
対象 OSPF インターフェース固有の認証設定を行う場合は、対象の OSFP インターフェースのインターフェースモードにて以下コマンドで行います。
ip ospf authentication [message-digest|null]
message-digest
:MD5ダイジェスト認証を使う場合に指定。指定しなかった場合は簡易パスワード認証となるnull
:所属エリアでは認証を行うよう設定されているが、対象インターフェースでは例外的に認証を行わないよう設定したい場合に指定する
考慮点:
ip ospf authentication
コマンドによるインターフェース単位での認証設定はarea authentication
コマンドによるエリアごとの認証設定よりも優先される
簡易パスワード認証用鍵の設定
対象の OSFP インターフェースのインターフェースモードにて以下コマンドで行います。
ip ospf authentication-key TEXTLINE
TEXTLINE
:鍵の値(文字列)- 8 文字以内で指定
TEXTLINE
は行末までがその値と見なされるため、スペースを含んでいてもよい
MD5 ダイジェスト認証用鍵の設定
対象の OSFP インターフェースのインターフェースモードにて以下コマンドで行います。
ip ospf message-digest-key <1-255> md5 TEXTLINE
<1-255>
:鍵番号(Key ID)
TEXTLINE
:鍵の値(文字列)- 16 文字以内で指定
TEXTLINE
は行末までがその値と見なされるため、スペースを含んでいてもよい
考慮点:
- 1 つの OSPF インターフェースには、255 個まで鍵を設定できる
- MD5 ダイジェスト認証を使うときは、同一サブネット上のすべての OSPF インターフェースで同じ鍵セットを使用するよう設定しなくてはならない(鍵の番号と値が一致していなくてはならない)
プライオリティの設定
DR、BDR の選出に関係するプライオリティの設定は、対象 OSPF インターフェースのインターフェースモードにて以下コマンドで行います。
ip ospf priority <0-255>
<0-255>
:プライオリティを指定。- 0 はDRになる資格がないことを意味する
- デフォルトは 1
パッシブインターフェースの設定
パッシブインターフェース(passive-interface)と設定した OSPF インターフェースは OSPF パケットの送受信を行わなくなります。ただしパッシブインターフェースに接続されているネットワークの情報は、スタブネットワークとしてルータ LSA(タイプ 1 LSA)に追加されます。
パッシブインターフェースの設定は OSPF モードにて以下コマンドで行います。
passive-interface [IFNAME|A.B.C.D]
IFNAME
:パッシブとする OSPF インターフェース名A.B.C.D
:パッシブとする OSPF インターフェースの IP アドレス[IFNAME|A.B.C.D]
を指定しない場合はすべてのインターフェースがパッシブとなる
OSPF プロセスの再起動
ルータ ID の設定を変更した場合、その変更を反映させるためにはシステムまたは OSPF プロセスの再起動が必要になります。
OSPF プロセスを再起動するためには以下コマンドを実行します。
clear ip ospf [<0-65535>] process
[<0-65535>]
:再起動対象の OSPF プロセス ID を指定- 省略時は稼働中のすべてのプロセスが対象となる
OSPF 関係の確認コマンド
主要コマンド
- show ip ospf
- OSPF プロセスの情報を表示
- show ip ospf border-routers
- OSPF のエリア境界ルータ(ABR)およびAS境界ルータ(ASBR)への経路情報を表示
- show ip ospf database
- リンク状態データベース(LSDB)に格納されている LSA の内容を簡潔に一覧表示
- show ip ospf interface
- OSPF インターフェースの情報を表示
- show ip ospf neighbor
- OSPF の隣接ルータの情報を表示
- show ip ospf route
- OSPF 経路表を表示
LSDB 関係
- show ip ospf database asbr-summary
- リンク状態データベース(LSDB)に格納されている ASBR サマリ LSA(タイプ 4LSA)の内容を表示
- show ip ospf database external
- リンク状態データベース(LSDB)に格納されているAS外部 LSA(タイプ 5LSA)の内容を表示
- show ip ospf database network
- リンク状態データベース(LSDB)に格納されているネットワーク LSA(タイプ 2LSA)の内容を表示
- show ip ospf database nssa-external
- リンク状態データベース(LSDB)に格納されている AS 外部 LSA(タイプ 7LSA)の内容を表示
- show ip ospf database router
- リンク状態データベース(LSDB)に格納されているルータ LSA(タイプ 1LSA)の内容を表示
- show ip ospf database summary
- リンク状態データベース(LSDB)に格納されているネットワークサマリ LSA(タイプ 3LSA)の内容を表示
仮想リンク関係
- show ip ospf virtual-links
- OSPF の仮想リンクの情報を表示
設定確認
- show ip protocols ospf
- OSPF プロセスの設定や状態に関する情報を表示
- show router-id
- システムのルータ ID を表示
―――――――――――――