Cisco 機器の OS バージョン選定とバグ調査
Cisco 機器の設計をする際、まず使用する OS バージョンを選定します。
OS バージョンの選定基準はいくつか考えれらますが、
- 機器動作全体に関わる重大なバグが存在しないか
- 使用予定の機能に関して影響のあるバグが存在しないか
といったようにバグを考慮することが良くがあり、それらを確認するためにバグ調査を行います。
バグ検索ツール(Bug Search Tool)とは
Cisco から提供されているツールとしてバグ検索ツール(Bug Search Tool)というものがあります。
バグ検索ツールは、対象型番や対象バージョン等を指定して既知のバグを検索したり、バグの詳細情報を確認したりすることができるツールです。

バグ検索ツールの使用条件
バグ検索ツールを使用するためには、Cisco.com のアカウントでログインする必要があります。
ただし契約の無いアカウントの場合、使用できる機能が制限されていたり、バグ情報の表示内容の制限や閲覧回数の上限があったりするため、実質的には使い物になりません。
そのため、バグ調査を行う場合は基本的には組織で用意した権限があるアカウントを使用することになります。または個人で機器を所有していて保守契約をしている場合は個人所有のアカウントでもバグ検索ツールを使用することができます。
バグ検索ツールの使い方
例として、Catalyst 9300L-24T-4G-E のバージョン 17.9.3 で影響を受ける(Affecting)バグを検索してみます。
条件に該当するバグを検索する
バグ検索ツールにアクセスします。
まず Product 欄で「Series/Model」が選択されていることを確認した上で右側の欄に対象型番を入力します。「catalyst 9300l-24t」あたりまで入力すると候補の型番が表示されるため、対象の「Catalyst 9300L-24T-4G-E」をクリックして選択します。

すると Product 欄で Catalyst 9300L-24T-4G-E が選択された状態になり、同時に下側に該当するバグのリストが表示されます。

続いてバージョンも指定してバグを絞り込みます。
影響のあるバグを検索したいためまず Release 欄で「Affecting Releases」を選択します。その後右側の欄に対象バージョンを入力します。こちらも入力後候補が表示されるため、対象バージョンをクリックして選択します。

すると Release 欄で 17.9.3 が選択状態になり、画面下側に該当するバグのリストが表示されます。

画面下側で検索されたバグのリストを確認できます。この例では 123 のバグが検索されました。左側の Filters 欄を使用するとバグの属性でバグをフィルタすることができます。

バグの詳細情報を確認する
検索されたバグの詳細情報を確認します。
検索されたバグリスト欄のバグ情報記載部分がリンクになっているため、対象のバグの箇所をクリックします。

すると個別のバグのページが表示されます。このページでバグの詳細情報を確認できます。

検索されたバグリストを Excel でエクスポートする
検索されたバグのリストと各バグの内容を Excel ファイルとしてエクスポートすることができます。
バグ検索ツール画面の右側の端に以下のような「Export Results to Excel」ボタンがあり、これをクリックすることで検索結果を Excel ファイルとしてエクスポートできます。

エクスポートされたファイルの中身は以下のようになっています。

バグ検索ツールで確認できるバグの情報
バグ検索ツールではバグに関して主に以下のような情報を確認できます。
- バグ ID
- バグに固有に割り当てられた ID
- Symptom
- 事象内容
- Conditions
- 事象の発生条件
- Workaround
- バグを回避する方法
- Further Problem Description
- バグに関する詳細な情報
- Status
- Cisco のバグへの対応状況
- Severity
- Cisco によって定められたバグの重大度
- 1~6 があり、1 が最も重大
- Product
- バグの発生が確認された型番
- Known Affected Releases
- バグの影響を受けることが確認されたバージョン
- Known Fixed Releases
- バグが修正されたバージョン
バグ調査時の考慮点
Severity 1~3 のバグは要注意
- Severity 1 のバグがある場合は内容にもよるが別のバージョンを検討したほうが良い
Workaround が存在するか
- 影響のあるバグでも Workaround が存在し、それが実行可能な内容か
バグの影響を受ける機能は機器運用上で使用する機能か
- 使用しない機能に関するバグなら無視することも考える
- 使用する機能に関するバグなら詳細に確認する
Product/Known Affected Releases は完全な情報ではない
- Product/Known Affected Releases には事象発生確認済みの型番/バージョンが記載されている
- Product に含まれていない型番だからバグの影響を受けないとは言い切れない
- Known Affected Releases に含まれていないバージョンでも事象が発生したバグがあった
バグ情報は随時更新されている
- 時間が経過するとバグの内容が更新されていたり、新たなバグが追加されていたりする
リリースから間もないバージョンについては未知のバグを考慮する
- リリースから間もないバージョンは運用実績が少ないため、発見されていない重大なバグが含まれている可能性がある