業務における認識齟齬と手戻り
業務を進める上で、メンバー間・関係者間で認識を正確に合わせるということは重要です。
なぜなら、関係者間で認識が合っていない場合、依頼者の想定とは異なるアウトプットが生み出されることになり、結果として手戻りが発生して工数が増大するといった状況が発生するからです。
認識齟齬が発生する原因
「依頼者」と「被依頼者」という関係において認識齟齬が発生する原因はいくつか考えられます。
原因を考える上で口頭で依頼した場合と文章で依頼した場合で分けて考える必要があります。
なお、ここでは「依頼者と被依頼者でアウトプットのイメージが大体一致している状況」を認識齟齬が無い状態であると定義し、「双方に何らかの能力の差があることにより依頼者が満足できないアウトプットとなった状況」は認識齟齬とは別の問題と考えて議論対象からは除外します。
依頼者側に原因がある場合
口頭で依頼した場合
- 依頼内容が整理されておらず、被依頼者側にとって理解しづらい内容
- 被依頼者が依頼者の意図を正確に理解できないことにより認識齟齬が発生
- 依頼内容の量が多いか、または複雑な内容
- 被依頼者が内容を記憶しきれず、または時間経過後に忘却されて認識齟齬が発生
- 一方的に伝えるのみで、被依頼者に確認の機会を与えない
- 被依頼者に疑問が残ったままになり、認識齟齬が発生
文章で依頼した場合
- 依頼内容が論理的に矛盾している
- 被依頼者は正解が分からずに認識齟齬が発生
- 複数の意味にとれる(一意に定まらない)依頼内容
- 被依頼者が依頼者の意図とは異なる意味で認識をした場合に認識齟齬が発生
- 依頼内容の文章が日本語として成立していない
- 被依頼者は意味が理解できずに認識齟齬が発生
被依頼者側に原因がある場合
口頭で依頼された場合
- 被依頼者の理解力不足による認識齟齬
- 被依頼者の記憶力不足により忘却
- 依頼を受けた後、内容を記録せずに忘却
- 不明点があるにもかかわらず依頼者に確認をせず、自己判断で進めた
- 自己判断が依頼者の意図と一致せずに認識齟齬が発生
文章で依頼された場合
- 被依頼者が文章の全体を確認せず一部分のみを見て判断してしまうことによる認識齟齬
- 被依頼者の文章読解能力の不足による認識齟齬
- 不明点があるにもかかわらず依頼者に確認をせず、自己判断で進めた
- 自己判断が依頼者の意図と一致せずに認識齟齬が発生
双方に原因がある場合
- 認識齟齬の原因となる事柄に、依頼/被依頼の時点で気付けていなかった
- 双方の
暗黙知
の違いによる認識齟齬- ここでいう暗黙知とは、明示的に説明されることのない前提知識のこと
- 一般的には、言語化されていない、または言語化が難しい、経験に基づく知識のこと
認識齟齬を減らす方法
依頼者: 相手の理解度を確認する
一度依頼して終わりではなく、依頼した後に被依頼者がどのように理解しているかを確認するということです。
被依頼者: 自分の認識を示す
依頼を受けた直後の認識のままアウトプット出力まで進めるのではなく、一旦自分の認識を整理して依頼者に確認してみるということです。
共通: 正しい日本語を使いましょう
認識齟齬が発生する原因の多くは「正しくない日本語を使っている人が多いから」であると考えています。
特に文章において意味不明な、または分かりにくい文章を作成する人が多い印象があります。
具体的には、
- 主語が無く主体が不明の文章
- 操作・動作等の対象が抜けている
- 助詞・接続詞を正確に使えていない
- 一つの文章に大量の内容を詰め込んでいる
- 論理的につながりが無いか、または矛盾した文章構成になっている
- 意味のない文章が繰り返されている
- 箇条書きを活用できていない
などです。松田は、学生時代に論理学を扱っていましたが、その為か世の中には正確な日本語を使えている人は少ないと感じています。
また「その内容でなんでわかった気になっているのか」と思うことも多いです。
正確な文章を作成できないと、人に何かを伝えるのが難しいだけでなく、人から「この人本当に分かっているのか」という印象を持たれる可能性が高くなります。
正確な文書を書くことを普段から意識することをお勧めします。
相手の立場になって考えるということ
正確な文章や、人に伝わる文章を作成するためには、相手の立場になって考えることが重要です。
「前提知識なしでこの文章を見たときに、自分ならどう感じるか」を考え、自分の意図と一致する結論に至るかを考えます。
重要な依頼は「文章」ですべき
自分が依頼者の場合に、どのように依頼すべきかという話ですが、口頭ではなく文章で依頼すべきです。
なぜなら、
- 口頭の場合エビデンスが残らず、後から内容確認ができない
- 人間の記憶力には限界があり、記憶力が弱い人もいる
- 松田も記憶力には自信がありません
からです。
ただし、「正確な文章を作成することができる」という前提があります。
別のパターンとして、口頭で依頼した後、後からエビデンスとして文章でも依頼する(文章として残す)という方法もあります。
認識齟齬が発生する前提で対策する
認識齟齬を減らすことはできても 0 にすることはほぼ不可能であると考えます。人間は完璧な存在ではないからです。
また、[依頼した/受けた]後に互いに認識合わせをするということが難しい状況もあり得ます。
そのため、認識齟齬が発生したとしても大きな問題とならない様、対策をしておくことも重要であると考えます。
- 自分が依頼者だった場合、想定と異なるアウトプットが出てきた場合の対応策を考えておく
- 自分が被依頼者だった場合、依頼者の意図とは異なっていたとしても手戻りとならないようなアウトプットを出す
といったことが考えられます。
「認識齟齬は起こり得る」と認識するということ
「認識齟齬は起こり得る」ことを認識することで、認識齟齬を減らすための対策を考え始めることができます。
すべてが自分の思い通りになるとは思わないことです。